2016年03月24日

最貧困女子
鈴木大介
幻冬舎
2014-11-07



読みながら思い出したのは、
15.6年前のことでした。
あの頃、僕も貧困状態でした。

まだ20歳になったばかりだというのに、消費者金融の数社から融資を受けつづけ、ついに合計額は100万円にまで膨れ上がっていました。アルバイトもちょうど辞めてしまっていて、収入がない状態。電気もガスも止められ、水道が止められるのも時間の問題でした(水道は命に関わるのでなかなか止められない)。

当時は調布に住んでいたのですが、周囲には畑がけっこうあるんです。そこでよく農家を訪ねて野菜を恵んでもらっていました。農家のかたは本当にやさしい人ばかりで、貧困状態の僕を不憫に思い、時には涙をうかばせ、野菜をくださる方ばかりでした。怪訝な顔をみせる人はひとりもいませんでした。

電気もない、ガスもない、薄暗い部屋で、生野菜(主にきゅうり)をむさぼっていました。農家のかたの優しさに味をしめた僕は次第に、よみうりランド付近の農家のところまで足をのばすようになり、スイーツ感覚で果物まで恵んでもらうようになっていました。ほんと、傲慢な乞食だと自分でも思う。

程なくして、体に異変が起きました。汚いはなしになってしまいますが、トイレで用をたした時のことです。便の色をみて青ざめたんです。用を足してふと便器に目をやると、そこにはみどり色の便がありました。真緑なんですよ。きゅうりそのまま出ちゃった、みたいな。

今であればインターネットでググれば、危険シグナルですよ、でも今すぐに入院が必要ってわけではないですよ、栄養ちゃんと取りましょうねって状態だとか調べられますが(でも病院はいきましょう)、当時はそんなすぐに情報得られませんでしたから、「やばい、これは死ぬんじゃないか」って本気で思ったわけです。

ちゃんとした思考をもっていれば、病院に駆け込むなり、友人を頼るなり、何かしらの手を打てるのでしょうけれども、そのときの僕はもう気が動転してしまっていまして、駆け込んだのは近くの中華料理屋でした。

半べそかきながら、中華屋のおじさんに「すみません、もう何日も食べていなくて、なんでもしますから、ご飯食べさせてください!」と頼み込んだのです。

出てきましたよ、チャーハン。

厳密に言うと野菜は毎日食べていたので、ウソついてるんですよ。ウソついてチャーハンもらってるんですよ。

そうか、お腹がすいた時は、すなおに「お腹がすいた」と言えばいいんだ。そのことに気がついた瞬間でした。図々しい性格な僕は、それからというもの、農家に通うことをやめ、飲食店に通うようになりました。

個人経営でもチェーン店でも、飲食店の9割以上が、お金がない人間にたいし、食べ物を提供してくれる。僕の場合は、2日に1回も食べさせてもらっていました。店は毎回変え(リピートした店もありました)そのとき食べたい店に入っていました。

お気に入りは焼肉店。焼肉店の場合は有名どころのチェーン店は断られる場合があるので、個人経営の店にいきます。チェーン展開していないお店で断られたことはありませんでした。特においしかった焼肉店に何回目かのリピをした時に「おまえ、いいからうちでバイトして生活立て直せよ」とおやじさんに言われ、2ヶ月ほど続いた0円生活が終わったのです。


だらだら書いてしまいましたが、要点は「まともにコミュニケーション取れれば最貧困状態にまで落ちる可能性は極めて低い」ということを言いたかった。

「最貧困女子」を読んでみると、最貧困にまで落ちてしまう人は、コミュニケーション能力に問題を抱えている人ばかりです。素直になれない、SOSの出し方がわからない、他人が怖い。どうして行政を頼らないんだって言ったって、行政の窓口には「他人」がいますからね。接し方がわからないんですよ。怖いんですよ。だから「他人」は避けたい。網の目からこぼれ落ちてしまう「最貧困女子」をカバーするには、申請から受け取りまで、全てを機械化してしまう他にない気がします。

非常に重いテーマの本です。面白くもなんともない。
ただ、可視化できない最底辺の実情を知れる良書です。

僕がいますぐに、彼女たちにしてあげられる事は思い浮かばないけれども、お腹がすいたら、すなおにお腹がすいた、助けてほしいと、他人を信じて頼ってほしいと願います。



座頭魄市orejiru at 20:28│コメント(0)トラックバック(0) │ このエントリーをはてなブックマークに追加

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