2014年05月06日

ブラタモリのような面白さを堪能できる全く新しい視点での歴史本でした。




例えば、第3章の「なぜ頼朝は鎌倉に幕府を開いたか」をとってみても、これまで地形を読み解いて考えたことなんてありませんでした。

地形を読むとこの土地が最適だったことが見えてくるんですね。

目の前には遠浅の浜辺が広がっていますが、海側から攻めようとした場合、水深1M以下では舟が前に進めなくなります。兵士は舟から降りて海をジャブジャブかきわけて進軍しなければいけないわけです。その間に弓矢で射抜き放題。上陸に成功したとしても海水の重みで思うように動けない。

周囲は森に囲まれていて、山側から攻めるにも斜面ばかりのこの土地では騎馬は出せません。歩兵の大軍で攻めるにも道は狭いですから、細長くなって進軍せざるを得ないんです。ですから横から弓矢で攻めれば大軍であれ関係ないんですね。

鎌倉幕府の前、京都の平安京が日本の中心でしたが、この盆地、衛生状態が非常に悪くて疫病が蔓延していました。大都市を支えるインフラが全く整っていなくて、鴨川が人々の生活水でした。同時に下水道でもあって、ゴミや死体も鴨川に捨てていたようです。周囲の山林も燃料として次々に伐採されてしまって、大都市としての限界がきていたみたいです。

そうした京都の失敗を遠くから観察していた頼朝にとって、鎌倉は完璧な地であったのは想像に難くありません。山から海へ流れる湧き水は常に清潔で、コンパクトな(当時は3万人が住めるほどの土地、現在では17万人以上が住んでいる)その地は人口が爆発的に増える恐れもなく、鉄壁の要塞で、山の幸と海の幸に恵まれた地形なんです。

僕はこの本を読んでいてもたってもいられず、早速車に乗り込んで鎌倉を目指しました。

地形から見た町並みは、これまで見ていた鎌倉とはまた違った鎌倉で、「古都の雰囲気を残しながらおしゃれな隠れ家カフェが立ち並ぶ鎌倉」を、キラキラした目で散歩する女性たちを微笑ましく見つめながらも、やっぱり男は黙って地形見て興奮するに限るなあ。なんて、みたらし団子にがぶり寄りながら思った休日でした。

他にも

関ヶ原勝利後、なぜ家康はすぐ江戸に戻ったか
なぜ信長は比叡山延暦寺を焼き討ちしたか
なぜ吉原遊郭は移転したのか
なぜ京都が都になったか
日本文明を生んだ奈良は、なぜ衰退したか
なぜ大阪には緑の空間が少ないか
脆弱な土地・福岡はなぜ巨大都市となったか

等々、日本を3D視点で(時間軸も考えるので4Dか)楽しみながら、脳トレにもなる非常におすすめの本です。

但し、こちらの本を信憑性に欠けるとする反証もいくつかあって、反証の論を読んでみると、確かな史実をもとに反証されているようでしたので、最初に述べたようにブラタモリ気分で読むのをオススメします。


座頭魄市orejiru at 19:44│コメント(0)トラックバック(1) │ このエントリーをはてなブックマークに追加

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日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)作者: 竹村 公太郎出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2013/10/03メディア: 文庫 Chikirinさんが「個人資産100億円みたいな人のお金の使い方」なんてエントリを書いていた。 人によって使い方は異なるのだろうが、歴史上、東京の大

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