2014年03月22日

the_secret_life_of_walter_mitty_main_large

2014年劇場鑑賞9本目。

観賞後のいま「LIFE」のメインテーマ曲がずっとあたまの中に流れています。José González(ホセ・ゴンザレス)の「Step Out」という曲です。



パァーンと視界がひらける感じがかっこいいですよね。HIPHOPのトラックにもいいんじゃないでしょうか。

映画の内容的にも、観賞後はいつもと違う道で帰ってみたくなったり、気になってたけど入りづらかったお店に飛び込んでみたりと、ルーティンから外れてみたくなるような、スゴくひらけた映画でした。

映画の主人公ベン・スティラーが演じるウォルターは、雑誌「LIFE」の写真管理部で働く冴えない男。空想癖があっていつもぼんやりしてるんです。会話中でさえ、映画のなかに飛び込んだかのような、劇的に展開していく世界を空想してしまうんですね。
いつも心ここにあらずなウォルターを周囲は、変わった人として見ているんです。

臆病者でもあって、ウォルターは社内の女性シェリルに想いをよせているのですが、話し掛けることも出来ないんですね。で、シェリルが婚活サイトに会員登録しているのを発見するんです。それからウェブ上でFacebookのpokeにあたる挨拶をしようとするのですが、なかなか押せない。何度も押そうとするんですが、手が震えてポチることができないんです。そのシーンがしばらく続いたあと、意を決して押すんですがエラーが出ちゃうんですよ。わけわからんので婚活サイトに問い合わせてみると、プロフィール欄に空白が多すぎるからって言われるんです。

ウォルター君、特筆すべきことが何もないんです。海外旅行の経験もないですし。

ネット+匿名でしか力を出せない“おまいら”ですよ。


それである日、いつものように出勤すると「LIFE」誌の休刊が決まったことを告げられるんですね。念のため言っておきますが、この「LIFE」はアメリカで実際に発行されていた雑誌です。写真が中心のグラフ雑誌で、有名な写真家といえば初めに思いつく「ロバート・キャパ」も「LIFE」から世に出ました。1936年創刊。2007年まで素晴らしい写真を世に出し続けました。そして2008年からはWEBでこれまでのLIFEの写真が検索可能となりました。歴史的写真が多いので飽きませんよ。
http://images.google.com/hosted/life

考えてみると、「LIFE」勤務の写真管理部だなんて勝ち組すぎるだろって話ですよね。

話を戻すと「LIFE」誌の休刊が決まったことを告げられて、それで「LIFE」誌のラストを飾る表紙の写真にこれを使ってくれって写真家からネガが届くんです。

「この25番のネガを表紙に」
lifemovie1

25番だけが見当たらないんですよ。

困ったウォルターは前後の写真を手掛かりにカメラマンを捜す旅に出るんです。海外旅行の経験もなかった彼がグリーンランド、アイスランド、ヒマラヤへ。その奇想天外な旅がウォルターの人生を変えるんですね。

空想の旅でウォルターが見ていた景色は、現実の旅で広がる、ほんとうの景色に変わっていくんです。これは圧倒的な美しさでした。空想の旅はCGを多様しているんですけれども、現実の旅ではCGは使わず現実の映像なんですね。当たり前のこと言ってますけど。けれどね、CGより強いんですよ、画力が。

そして、これまで「LIFE」に掲載された写真の数々が、シーンの随所に登場します。

そして25番のネガにはなにが写っていたのか。
是非、自分の目で確かめてください。


感想とは少しずれてしまうのですが、この映画を見て僕は少し前のこの話題を思い出しました。

NHK「クローズアップ現代」2014年1月14日(火)放送「ポエム化社会」
http://www.dailymotion.com/video/x1a25oa_news

いま日本はポエムが蔓延していると。
マンションポエムなんてのは最たる例でしょうかね。
“「天空に舞い踊る星々のトレモロ。人々の営みを物語る地上に散りばめられた灯火のロマネスク。あるいは、早朝のまどろみから朝日に洗われつつ姿を現す都会のエクリチュール」(レーベン北千住ルミレイズタワー)”
http://nikkan-spa.jp/507075

都知事選で話題になった家入かずまさんなんてのは、twitter見てる限りでは既にポエマーでしかない無双状態ですし。
https://twitter.com/hbkr

で、「LIFE」ってスゴく、ポエムっぽいんですよ。★7と評価を下げた一番の原因です。ポエム化社会というのは日本だけの問題ではなくて、世界全体がポエム化してるのかもしれないと感じました。
共感を多く集めることが「力」であるのは、昔から変わらぬことではあります。ですが、メッセージを抽象化して薄めてまで、共感を集めやすくするのは安直すぎやしないか。

そして僕らも、耳当たりのいいメッセージ、抽象化されたメッセージにはもっと疑問を持つべきだ。

座頭魄市orejiru at 00:01│コメント(0)トラックバック(0)映画 │ このエントリーをはてなブックマークに追加

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