2014年02月18日

粘膜人間 (角川ホラー文庫)
飴村 行
KADOKAWA / 角川書店
2012-10-01



タイトルからして笑えてくるが、中身は輪をかけて笑いを誘う。
書き出しが「雷太を殺そう」から始まる物語は、評判どおりの酷い展開を広げていく。そもそも殺される雷太という男は、中学生の利一と祐二の父親の、再婚相手である女の連れ子、つまり義弟で小学5年生である。しかし身長は195cm、体重105kgの巨漢なのだ。利一と祐二が学校から帰ると父親は全裸で縛り上げられていて、右手に鞭を持った雷太が、左手に持った蝋燭を父に垂らしてほくそ笑んでいるのだ。これは殺さなければいけないと、読者を力づくで納得させる。

利一と祐二は「河童の3兄弟」に殺しの依頼をしようと計画を立てる。しかし河童たちとコンタクトを取る方法がわからない。そこで2人は防空壕で暮らすアウトローなお兄ちゃんに相談をする。もちろんお兄ちゃんは河童に依頼をする方法を知っている。だがただでは教えないという。

お兄ちゃんは、お兄ちゃんのペニスを握ってシコシコしてくれたら教えてあげると言う。

ショタコンである。
中学生の男の子の手は柔らかくてちょうどいいのだそうだ。

射精して満足したお兄ちゃんは河童とコンタクトを取る方法を教えてくれる。注意点が2つ。

1、はじめは下手に出て、河童をおだてること。
1、河童は見返りを求めてくる。その要求は絶対に受けること。

2人は河童に会いにいく。
河童をおだてるうちに1つ嘘をついてしまう。村の女の子はみんな河童たちのことをカッコいいと言っている、グッチャネしたいと言っている、と。
河童は目を見開いて聞き返してくる。
「おれとグッチャネをっ」

河童は殺しの依頼を受ける。見返りとして、グッチャネできる女を用意しろと要求してくる。村じゅうの女がグッチャネしたがっているなら簡単なことだろうと。

悩んだ挙句、1人の女を思い出した。同級生の成瀬清美である。
「おれが女を紹介する」
「本当か、本当におめえが女を紹介してくれんのか?」
「本当だ」
「どんな女だ?」
「望み通り、俺と同い年の女だ」
「グッチャネはできるのか」
「できる」
「器量はいいか」
「いい。おまけに胸と尻がでかい」

こうして交渉に成功する。しかしこの差し出した清美だが、なぜこの女を思いついたのか。それは「非国民」として村八分にされていたからだ。清美の兄は徴兵のため入隊が決まっていたがその前日の夜に行方が分からなくなってしまった。両親は収容所に送られたが、清美は14歳だったため収容所には送られなかった。しかし家で一人、どこにも出掛けられないまま、憲兵隊にもマークされていた。村全体で清美への接触は禁止されていたため、都合が良かったのだ。

清美と接触をはかろうとする利一と祐二、そして河童。
しかし清美にはある秘密があり——。


ここまでで物語の10%くらい。

まあ、とにかく、エログロファンタジーだ。
ここまで読んでいただいて、おもしろそう! と思えたなら勿論この先も楽しめる。だが、感嘆符を打つほどでないならば、やめておいた方がいい。

ぼくはグロテスクなものを好んでいるが、amazonのレビューで絶賛されているほどグロテスク描写が優れているとは感じなかった。それは作者が意図的にリアリズムを排除し、ファンタジーに徹しているから。それが功を奏して、他には見られない異色の味わいが本書では楽しめる。

amazonのレビュー内で「漫画化するなら漫☆画太郎先生作画で」とあったが、まさに。


座頭魄市orejiru at 12:18│コメント(0)トラックバック(0) │ このエントリーをはてなブックマークに追加

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