2014年01月19日

内臓とこころ (河出文庫)
三木 成夫
河出書房新社
2013-03-05


本書は「さくら・さくらんぼ保育園」で行なわれた三木成夫(解剖学者)による講演会の模様を文字に起こした本です。

糸井重里さんが「誕生祝いのプレゼント」として友人によく贈っていると知って、興味をもちました。

三木成夫さんの話はユーモア溢れめっぽうおもしろい!
「こころ」とは、内蔵された宇宙のリズムであると説き、おねしょ、おっぱい、空腹感といった子どもの発育過程をなぞりながら、人間の中に「こころ」がかたちづくられるまでを解き明かしていきます。

例えば人間を人間たらしめる「直立」について

これを「視界拡大」の衝動——人間だけの持つ、この強烈な促迫の産物としています。
遠くを見る眼差し、というのがあります。たとえば、あの小高い丘に腹這いになっているライオンや、大空を舞っている鷲。目つきがどことなく人間と似てないですか。しかし、そこには根本的な違いがある。動物たちのそれは、たったの獲物と直結しているだけです。(中略)これに対して人間のは、あくまでも全体の景色を、それもできるだけ遠くを…というものですね。
 直立を生むのは、ですから、狙う衝動ではなく、あくまでも遠くを眺めようとする衝動です。この「遠」に対する強烈なあこがれ——これこそ人間だけのものです。宇宙の彼方に、果てしなく旅を続けてゆく、あの世界です。いってみれば私ども星ひとつ眺めている時もでも、そこでは、じつは何千・何万光年の「時空の遠」を見ている、ということになる。
 “骨董趣味”から“歴史ブーム”それに海外旅行から登山隊…。これらはみな、この「遠」に対するどうしようもない憧れなんですね。


このようにとても分かりやすい説明で、ハイハイからつかまり立ちに至るプロセスを解説してくれます。
主に0歳児から3歳児までの成長過程において、内蔵にはどのような変化が起こっているのか。それを本書で知ることで、子育てのおもしろさがまた別の視点からも楽しめるようになっています。

ところで表紙の絵ですが、なんだと思います?

これは受胎38日めの胎児を正面から描いた絵です。
受胎からどのように変化していくのかを観察した結果が興味深かったです。
この38日めの胎児には五千万年前の新生代第三紀の生物の特徴がみられるのだとか。
36日めでは一億五千万年前の中生代ジュラ紀の生物の特徴が…。
35日めでは二億年前の中生代三畳紀の特徴が…。
解剖学と生物学の観点から語られる驚愕の事実に、鳥肌が立ちました。


プレゼントにも最適な本だと思いました。
人間ってほんとおもしろい!


座頭魄市orejiru at 13:04│コメント(0)トラックバック(0) │ このエントリーをはてなブックマークに追加

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