2017年07月

2017年07月08日

吉原御免状 (新潮文庫)
隆 慶一郎
新潮社
1989-09-28


隆 慶一郎のデビュー作。
「影武者徳川家康」http://takushi.blog.jp/archives/52081751.htmlの世界観が気に入ったので、続けて「吉原御免状」を読んでみたが、これまたのたうち回るほど面白かった。61歳にして小説家デビューというのもすごい話だが、デビュー作にしてこれだけクオリティの高い小説を書けるなんて。徳川家康級の怪物じゃないか。

話は、まだ幼いうちに宮本武蔵に拾われ、山の中で育てられた松永誠一郎の物語だ。師である宮本武蔵からの遺言は25歳まで山を出てはならぬ、そして26歳になったら山を出て江戸へ行き、吉原の庄司甚右衛門を訊ねよ、であった。吉原に着いた誠一郎を迎えたのは、百挺をこえる三味線が奏でる清搔(すががき)の音色。月明かりだけが頼りの暗い夜道の先に、華やかな灯りと音色に包まれた吉原のそれはなんと煌びやかなことか。
着く間もなく誠一郎は謎の影に襲われる。何やら「神君御免状」を渡せとわけのわからぬことを言う。この「神君御免状」が、物語を思いも寄らぬ意外な方向へと向かわせる。どうやら徳川家康が江戸開府にあたって庄司甚右衛門に与えたらしい御免状だとわかってくる。それを奪いたがっている影は裏柳生だということがわかってくる。そして裏柳生を動かしているのは二代将軍徳川秀忠だとわかってくる。
謎に包まれた吉原の闇の歴史を紐解いていくと、ついには徳川家康影武者説へと繋がっていくのだ。これが実にお見事。文化的考察も素晴らしく、勉強にもなる。
松永誠一郎の生誕の秘密が解かれる頃には、読者をすっかり江戸時代に引きずりこむ怪物のような小説だ。

松岡正剛の千夜千冊http://1000ya.isis.ne.jp/0169.htmlでも、「明日にでも読み始めることを「千夜千冊」の読者にもなんとしてでも強要しておくことにする」と言っているように、本好きはすぐにでも読んだ方がいい。

僕は吉原に惚れた。
今からちょっと吉原行ってくる。

座頭魄市orejiru at 10:27│コメント(0)  | このエントリーをはてなブックマークに追加
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