2015年12月18日

ストーナー
ジョン・ウィリアムズ
作品社
2014-09-28


2015年に読んだ本の中でもっとも心に響いた小説。

特に男性に勧めたい本だが、あらすじを語っても多くの人は「何それ!読みたい!」なんて思わないだろう。平凡な男性の、平凡な人生が淡々と語られるだけで、特筆すべき事件が起こるわけでもなく、感動的な名場面が用意されているわけでもない。粛々と、不器用な男の小さな悲しみが積もり続けていく。しかし誰もがそうであるように、深い悲しみは人を強くする。悲しみこそが、と言ってもいい。それから、不条理の中にも小さな幸福を見出し、自らの人生を、生きることを肯定していく。悲しみの降り積もる中に、僅かな幸福も堆積し、層状をなして累積したそれはまるで地層のように美しく、大きな感動を与えてくれる。何者か目指し、しかし何者にもなれぬ人生を、それでもなお美しいのだと理解するだろう。


本書が刊行されたのは1965年。当時はそれほど評価されることはなく、次第に忘れられた作品となった。それから約半世紀が経ち、欧州で再評価をされ一気に世界中に広まったのだそうだ。

日本では昨年設立された「日本翻訳大賞」にて、読者の支持が最も高かった本として「読者賞」に輝いた作品。

今のところkindle版はないようだが、電子版よりも紙で読むのを薦めたい。この本は装丁にも心に染みる配慮がされている。カバーを剥がし、裸になった赤い表紙の「ストーナー」が心に刺さる。是非読んで体感してほしい。

完璧に美しい小説。

座頭魄市orejiru at 12:42│コメント(0)トラックバック(0) │ このエントリーをはてなブックマークに追加

2015年12月10日

草思社から出版された「世田谷一家殺人事件」を読んだのはもう何年も前の事だけど、つい数日前まで外国人犯罪集団「クリミナル・グループ」の存在を疑ったことはないし、書かれていた内容について疑問に思うこともありませんでした。ただただ、クリミナルグループ怖ぇ!と怯えてた。




本書を読んだあとにネットを使って調べればすぐ分かることだったのに、鵜呑みにしていたのが今となっては恥ずかしい。というのも、著者「斉藤寅」版の「世田谷一家殺人事件本」は警察当局から内容が事実とは異なっていると指摘されていたようで、amazonレビューを見ても分かるとおりデタラメな本として今は定着しているようなのだ。


その事実をなぜ今頃になって知ったのかというと、今週1冊の本が刊行されたから。


世田谷一家殺人事件 15年目の新事実
一橋 文哉
KADOKAWA/角川書店
2015-12-05


kindle版もあります。



amazonの書影では帯の文言を確認出来ないのだけれども、書店で見れば銀の箔を豪快に使った大きな文言が飛び込んでくる。

わたしは真犯人に会った。

順番としてはこの本を見かけた時はまだクリミナルグループこそ真犯人だと信じて疑わなかったわけで、マジか!クリミナルグループに飛び込んでいったのかよ!と驚いたわけだ。

すぐに購入して、その足で(仕事中だったにもかかわらず)喫茶店に入り、夢中で読んだ。

一橋文哉もまた、情報の出所は公にしない書き手のため、話の信憑性については裏付けが取れない部分もあるわけだけど、この本は説得力が強かった。というか、この本こそが真実だろうなと信じられる内容だった。

一橋文哉の3億円事件を読んだ人なら、そのぐいぐい引き込む文章を体験済みだろうけど、今度の新刊もまあすごい。

三億円事件 (新潮文庫)
一橋 文哉
新潮社
2002-02-28



2014年のベスト10にいれた清水潔の「殺人犯はそこにいる」級に、手に汗握りながらの読書でした。

実際のところはクリミナルグループではなかったのだけれども、まぁ、、、恐怖は増幅してしまいます。読んでみてください。ほんとに怖いから。

2015年のベスト10冊に間違いなく入る書。


座頭魄市orejiru at 12:13│コメント(0)トラックバック(0) │ このエントリーをはてなブックマークに追加

2015年12月08日

刑に服す「僕」が事の顛末を、犯した罪を、過去に受けた傷をさらけ出してゆく。

この手の自分語り小説というのはハズレがない。

それがフィクションであれ、ノンフィクションであれ。

獄中からの言葉には特別な魔法がかけられている。




「解錠師」もまた、刑務所の中で10年過ごした青年が、その過去を回想していく小説だ。

アメリカで多くの賞を獲得した「解錠師」は、日本でも2012年週刊文春ミステリーベスト10海外部門第1位、このミステリーがすごい2013年海外編第1位を取り注目された。

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーヴ・ハミルトン
早川書房
2012-12-09


kindle版もあります。
解錠師 ハヤカワ・ポケット・ミステリ
スティーヴ ・ハミルトン
早川書房
2012-08-01



個人的にはミステリー要素の部分に物足りなさを感じたのは事実だけれども、この小説の醍醐味はミステリー要素ではなく、ロマンス要素にこそあると思う。ロマンス描写がそれはもうキュンキュンきまくる小説なのだ。

少年は8歳の頃に、ある事件がきっかけで失語症となってしまう。なかなか語られないその事件。いったい少年に何があったんだ!?と、どう考えたってそっちに注目してしまうし、事実そう促す語り口調だけど、そのいわゆるミステリーの核となる事件は正直なとこ想定の範囲内におわる。


ただね、アメリアとのロマンスがまぁすごい。声が出ない少年とアメリアが心を通わせていく手段が漫画なのですよ。漫画みたいな、という意味ではなく、漫画。

自分の気持ちを漫画にしてアメリアに読ませる。アメリアはそれに応えて漫画の次のコマを描いて少年に渡す。二人でコマを交互に描いていく。

そしてついに―—。

ピークのところは悶絶しました。

物語の中盤のところ。そのロマンスがこの小説のもっともおいしいところ。そこを味わうだけでも十分価値のある、かなりオススメの小説です。

座頭魄市orejiru at 18:31│コメント(0)トラックバック(0) │ このエントリーをはてなブックマークに追加

2015年11月12日

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【あらすじ】
世界にその名をとどろかせるエベレスト登頂を目指し世界各地から集まったベテラン登山家たちは、参加者の体調不良などトラブルが重なり下山が大幅に遅れる。さらに天候が急激に悪化し、命の危険性が劇的に高いデスゾーンで離れ離れになってしまう。ブリザードや酸欠などの極限状況に追い込まれた一行は……。

【感想】
IMAX3Dで鑑賞。3D映画は去年の「ゼロ・グラビティ」以来の2回目。
普段は割引を駆使して1本858円で鑑賞している小市民としては、割引が適用されないIMAX3Dの2200円という金額はかなりヘビィな圧迫感を受ける。それでもこの映画は臨場感が売りの作品なので奮発した。

で、見終わってみての感想は「いうほど臨場感なかったかな…」だった。かなり多くの方が「まるで本当にエベレストに登っているかのような臨場感だった!」とか「見ているだけなのに凍えてしまう!」とか言うけれども、僕は最後までスクリーンの向こう側の世界としてしか見れなかった。

毎週「たまむすび」というラジオ番組で火曜日に映画評論家の町山さんがオススメ映画を紹介するコーナーがあって、僕は毎週これを楽しみに聞いているんです。この「エベレスト」も紹介された作品なのですが、見終わってみて「今のアメリカはかなり不作な時期」というのが暗に示されているようで少し寂しく感じた。

もうみんな年末の「スターウォーズ」待ちでしょ。。。
新しい予告が先週末から封切りされましたけど、今回新たに追加された映像は半端ないよ。とんでもない「スターウォーズ」がきちゃうぞ。もうそっちに正直心は持っていかれてしまいました。


遭難を追体験してみたい方には読書のほうがオススメです。



「岸よぉぅぅ」

凍 (新潮文庫)
沢木 耕太郎
新潮社
2008-10-28


「傑作!」

座頭魄市orejiru at 13:02│コメント(0)トラックバック(0)映画 │ このエントリーをはてなブックマークに追加
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【あらすじ】
優れた画力を持ちながら将来の展望もなく毎日を過ごしていた高校生の真城最高(佐藤健)は、漫画原作家を志す高木秋人(神木隆之介)から一緒に漫画家になろうと誘われる。当初は拒否していたものの声優志望のクラスメート亜豆美保への恋心をきっかけに、最高はプロの漫画家になることを決意。コンビを組んだ最高と秋人は週刊少年ジャンプ連載を目標に日々奮闘するが……。

【感想】
原作の漫画は未読なので比べることは出来ないが、映画の出来は良かった。

後日書き加えるかもしれないが、とりあえず記録だけ。

座頭魄市orejiru at 11:29│コメント(0)トラックバック(0)映画 │ このエントリーをはてなブックマークに追加

2015年10月05日

20150828211810

【あらすじ】
ロンドンにある高級スーツ店「キングスマン」は、実はいかなる国の干渉も受けない屈指のエリートスパイ集団だった。ブリティッシュスーツを小粋に着こなす紳士ハリー(コリン・ファース)もその一人で、日々極秘任務の遂行に務めていた。そんなある日、仲間が何者かに暗殺され、彼は街で不良少年エグジー(タロン・エガートン)をスカウトする。

【感想】
マジかよ!今年ベスト級におもしれーじゃんか!

レッッッッツ パーーーティィィィィィ!!

「キック・アス」が好きな人は今すぐに「キングスマン」見に行ったほうがいい。というか「マッドマックス」と同じくらいバカになれるよ。

しっかり正統派スパイ映画として作り込んでいながらも、これまでのスパイ物のどれにも当てはまらないポップでキッチュなセンスを練り込んでます。おまけにギャグセンスも素晴らしい。それでいて青年が大人になるまでの成長物語として感動を誘う。なんだこのバランス力。

マシュー・ヴォーン監督のこと「キック・アス」の監督さんとしか認知していなかったので、帰ってきてから過去作を漁ろうとググったら

ガイ・リッチー監督と組んで「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」製作してる人だった。

27歳で「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」製作して

29歳で「スナッチ」製作してる。この人やばいな。

頭のなかがパーティすぎる。

まあともかく、これは映画館で観ないと絶対損するタイプの映画なのは間違いないです。

「キングスマン」は観とけ!

座頭魄市orejiru at 20:53│コメント(0)トラックバック(0)映画 │ このエントリーをはてなブックマークに追加

2015年09月16日

職業としての小説家 (Switch library)
村上春樹
スイッチパブリッシング
2015-09-10




面白かった。

本当に面白かったし、案外こういう生春樹(生春巻きみたいですね)を覗いてみたかった人は相当多かったはずで、僕ももちろんその一人。先日発売された「村上さんのところ」と併せて読むことで、これまでタバコの煙のように輪郭が曖昧な「村上春樹」が、夏の入道雲のようにくっきりと見えた感じがします。どちらにせよ実体として掴むことは出来ないのですが。


12章の”うちの夫婦の本棚というのはくっきりと二つに分かれていて、昔の東西ベルリンみたいにまったく行き来がありません。”で、村上夫婦の自宅本棚リストを覗きたくなりました。ベルリンの壁のような夫婦の本棚。むしろ素敵ですよね。春樹さんはノンフィクションを好んで読むそうですが、どんな本が並んでるんだろう。

座頭魄市orejiru at 20:31│コメント(1)トラックバック(0) │ このエントリーをはてなブックマークに追加
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